南筑後臨床麻酔ペイン研究会に参加しました

管理人のikyokuchoです。
11月9日 大牟田ガーデンホテルにおいて行われた南筑後臨床麻酔ペイン研究会に参加しましたので報告します。
特別講演の演者は、麻酔科の将来を背負って立つ麻酔科会の若きリーダー琉球大学麻酔科准教授 垣花 学 先生です。
個人的には2006年プラハで行われた国際心臓麻酔学会で、一人で参加していた私は垣花先生に大変お世話になった経緯があります。

演題は『新たな治療の可能性〜毒を持って毒を制す〜』。

〜毒を持って毒を制す〜?

確か垣花先生の研究分野は脊髄虚血に関するものであったはずだが・・・
これは是非とも講演を聞きたいと思い。大牟田まで行ってまいりました。

講演の最初はNOの話、うーん大気汚染など起こすガスで、毒と言えば毒です。人工心肺使用症例の術中ににNOを使用した治療法などNOを利用した治療の紹介やメカニズムの解説などがありました。
さすが垣花先生、わかりやすい。拍手パチパチパチっと終わるかなと思いきや、講演はこれだけでは終わりません。
そういえば、2年前にMGHに留学されたときの研究内容については聞いたことがなかったなぁー。

次の話題は硫化水素(H2S)、硫化水素?臨床と何の関係が?
硫化水素といえば、2009年頃硫化水素を使用した自殺が社会問題となり、あの「ムトウハップ(六一〇ハップ)」を生産していた武藤鉦製薬が業務終了になったことが有名。
これは確かに毒です。しかしこれが毒?を制するの??

心肺停止後の蘇生中のマウスに硫化ナトリウムを注入したところ、24時間後はコントロール群の生存率は約38%なのに対し投与群では生存率100%。しかも生存したマウスの神経学的所見でも有意差があり、非投与群のマウスとは運動や飲食の行為など質が全く違うといった報告(Minamishima_Circulation_y 2009_v120_p888)の紹介。
その他にも、末梢神経障害や炎症などにも効果を示す報告が最近増えてきているとのこと。


さらに話は続き、硫化水素は仮死状態を作り出す(Blackstone_Science_y2005_v308_p518)。どんどん垣花ワールドに引き込まれていきます。
硫化水素の投与によりマウスの体温は20度程度まで低下し、投与を中止すると元に戻る。低体温中は代謝や酸素需要量も低下して生体は維持され、投与中止で再び元に戻る。硫化水素にはこのような驚くべき作用があるそうです。

そういえば、前教授の加納先生は現在の勤務先の山鹿で連日温泉に浸かっておられるせいかすごくお元気で毎日麻酔をされています。硫化水素による細胞保護効果なのでしょうか!?

垣花ワールドは終わることなく、きっと「毒」から「薬」へと変わる日が来るでしょう。現在は琉球大学で研究を始める準備を進めておられるのですが、なにしろ社会的な認識は「毒」ですから、決まり事の厳しい日本では施設、設備の許可を取るだけでも相当な資金と労力が必要だそうです。

講演後は垣花先生を囲んで楽しくお食事会。二次会が終わった頃にはもう終電がありませんでした。