第43回南筑後臨床麻酔ペインクリニック研究会

平成26年6月13日(金)オームタガーデンホテルにおいて南筑後臨床麻酔ペインクリニック研究会が開催されました。

演題「虚血再灌流傷害と臓器保護」
演者 長崎大学医学部麻酔学教室 教授 原 哲也先生

紹介された、ポストコンディショニングの論文(Zao 2003)
“犬の心筋梗塞モデルにおいて、ポストコンディショニングの適用は冠動脈の閉塞後の心筋梗塞の面積を減少させ、プレコンディショニングと同程度の効果がある。”
は論文が出た当時は心臓麻酔にとても興味があり、抄読会で発表したことを思い出しました。

本公演では、プレコンディショニングやポストコンディショニングによる心保護効果を自験例を交えての解説、そして後半は循環作動薬の実際の臨床での使用について解説していただきました。

気絶心筋モデルではセボフルランによるプレコンディショニング効果はmKTPチャネルが関与。また、デクスメデトミジンにもポストコンディショニングによる心保護効果があるとのことです。

パテントブルー、TTC染色を行って計測した心筋梗塞サイズの研究では、オルプリノンによるプレコンディショニング獲得はPI3K/AktやミトコンドリアのPTP(permeability transition pore)が関与しているおり、心保護の細胞内メカニズムにはこのmPTPが大きく関与しているそうです。ミルリノンは高血糖状態でも心保護効果を示すようです。
このように虚血負荷による保護効果は心臓だけでなく、腎臓や肝臓でも保護効果が認められると報告されています。

実際の臨床使用では、
ニトログリセリンは、冠虚血に対する予防的投与としてのエビデンスレベルは2bとあまり高いものではなく、血管拡張と循環血液量の低下をもたらし、かえって冠灌流圧を低下させてしまう恐れがあるとのことです。予防的投与としては、ニコランジルの投与を勧められていました。

10数前、私が九州麻酔科学会で心臓麻酔関係の発表をした際に、原教授から指導的質問を受けたことがありました。そのことは鮮明に覚えていて、今でもその時の指摘を実感しながら日々麻酔を行っています。今後もご指導の程よろしくお願いいたします。

講演会終了後は麻酔科医師の懇親会が用意されていました。
久留米大学聖マリア病院大牟田市立病院、筑後市立病院など多数の筑後地区の麻酔科医が集まり、原教授を囲んで実りある楽しいひと時を過ごすことができました。